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ニューアルバムのリリースを前に、４月で旧譜のＣＤ化も完結した(気づいた人もいると思うけど、
この連載のタイトルは♪ＧＳ・アイ・ラブ・ユー♪のジャケットからとったもの）。
その４月分に含まれていたのが、ある意味では、一番貴重な♪ジュリー・ソング・
カレンダー♪。これまではカセットテープだけの発売でレコード化さえされていなかった
作品だけに、ＣＤ化のリストに入っているのを見た時は、『もうけもの』という印象だった。
この♪ジュリー・ソング・カレンダー♪はかつてジュリーがやっていたラジオ
番組『ニッサン・ミッドナイトステーション』での『マンスリーソング』という企画をまとめたもの。
各界で活躍する女性たち(多岐川裕美、松任谷由美、青島美幸、原由子、里中満智子、落合恵子、Ａ・
ムッソリーニほか）が書いた詩にジュリーが曲をつけ、それをエキゾティクスをバックにジュリーが
歌っているのだが、けっこう曲もつぶぞろいで聴き応え十分。
もちろん、遊び感覚で作られたものだから、オリジナルアルバムのような完成度はないが、何より
当時のジュリーの勢いが感じられるのが、実にいい(ちなみに、当時のおりじなるアルバムは、
♪ス・ト・リ・ッ・パ−♪、♪a wonderfultime♪
、♪ミス・キャスト♪ あたり）。
ただ、ひとつだけ残念なのは、ジャケットがあのカセットのひどいもののままだったこと。
ほかのものに変えてくれたら、もっとよかったと思うのだが…。
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いよいよジュリーのニューアルバム♪パノラマ♪(東芝ＥＭＩ)が６月１４日
にリリースされる。前２作、とくに♪単純な永遠♪は、かなりロック色の
強いアルバムだっただけに、プロデューサー３作目になる吉田建がどういう手に出るか興味深かった
のだが、結果はまったく違うものを持ってきた。２５周年ということが頭にあってのことだろうが、
ハッキリと『歌謡曲』、そしてジュリーの２５年のキャリアを意識した作りなのだ。
いい意味で『ゴチャマゼ』的内容で、さまざまな音楽の要素や、遊びを取り入れ、今ハヤリの
レトロ感覚もあふれた下世話な(これもいい意味で)サウンドになっている。もちろん、だからといって
単なる懐古趣味ではなく、『現在』というフィルターを通して、再構築してある。つまり
♪ＧＳ・アイ・ラブ・ユー♪ に通じるところがある作品といってもいいだろう。
戦後歌謡というイメージの♪２人はランデブー♪、泉谷しげるの詩を
ジャズ的センスで処理した♪ストイック・ヘブン♪、チープの極みという
感じのサンディとのデュエット♪テキーラ・サンセット♪
♪ルナ♪ ♪月のギター♪ に続く『月(＝狂気)シリーズ』
の美しいロック・バラード ♪月の刃♪(なんとパンタ作)など、曲はどれも
完成度が高く、マニアックなファンならついニヤリとしてしまうはずだ。
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シングル♪スプリーン〜六月の風にゆれて〜♪は、なんと(予想はして いたが…)オリコンの１００位にも入らなかった。(6/24付で、１９１位、最高１０６位）。これは 私の知る限り、ジュリーにとって史上最低の成績。では、曲が悪いのかというと、けっしてそんなこと はなく、ビートルズ(というより、ポール・マッカートニー)を思わせるストリングを使ったきれいな 曲なのだ。ただ、地味で何かのテーマソングにでもならない限り、一度聴いただけで、買いたくなる ようなタイプの作品ではないのも確か。いい曲過ぎるというのも妙な表現だが、まさにそんな感じ。
そして、アルバム♪パノラマ♪にも同じようなところがある。前回の
最後に『マニアックならついニヤリとしてしまうはずだ。』と書いたが、その後に続く、『デモ、
一般のファンまで魅了する力には、欠ける』という部分は、意識的にはずしておいた。
♪パノラマ♪は完成度の高いよくできたアルバムだが、まとまり
過ぎていてほとんど趣味的アーチストの作品というイメージなのだ(前回は１００位にも入らなかった
アルバムが、今回は6/24付で、６８位初登場というのも、そんな傾向の表れか）。１曲でも２曲でも
全体の枠からハミ出すような曲があれば、全然イメージが違っていたのだろうが、アルバム自体で
完結してしまっていて、そこがジュリーらしくないのである。
ハッキリ言ってここ２枚のアルバムは、完成度の高さに目がいって気づきにくいが、吉田建の オーバープロデュース。やはりジュリー復活のマニフェストだった ♪彼は眠れない♪(完成度では劣る）と、シングル♪ポラロイド・ガール♪ が、ここ数年で、もっともジュリーの魅力をアピールしていた作品だったし、作品そのもののパワー も一番だった。
とにかくジュリーは単なるマニアックなアーチストにはなってほしくない。俗ウケしたうえで、
マニアックなファンも満足させる存在でいてもらいたいのだ。かなり難しい要求だが、これもジュリー
だからこそである。
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多少の不安を胸に♪パノラマ♪ツアーの東京公演(7/15．16)に出かけた
が、それが逆によかったのか、満足して会場をあとにすることができた。アルバム
♪パノラマ♪のコンセプトから考えて、今回のツアーは『何でもあり』というスタイルに
なるだろうと予想していたが、その通り、ここ２年のツアーとは、かなり選曲を変えてきた。
アルバムをストレートにコンサートに反映させなかったのも正確で、『ジュリーの魅力を複数の視点
からとらえる』という♪パノラマ♪の本来の狙いが、はるかにうまく表現
できていた。
全体としては、前半(といっても、2/3くらいだが）に歌謡曲的感覚の曲をそろえ、後半はロック
色の強いステージという構成。前半には、♪ヤマトより愛をこめて♪、
♪あなたへの愛♪という意表をつく選曲もあったが、この構成の妙で違和感
を感じさせない。でも個人的には、『直線一気』という感じの後半のロックチューンの連発のほうが
感激ものだった。♪メイビー・トゥナイト♪、
♪恋のバッド・チューニング♪、♪ニュース♪、
♪バックドアから♪など、タイプも発表時期も違う曲がみごとにジュリー
のカラーでまとまり、ジュリーならではの魅力を強力に発散していた。
これは、♪パノラマ♪にはなかったものだ。おまけにアンコールでは、
♪コバルトの季節の中で♪、♪君をのせて♪で
長年のファンを泣かせるなど、サービス精神も健在。欲を言えば、♪彼は眠れない♪
と♪ストイック・ヘヴィ♪ をやって欲しかったが、それを差し引いても、
合格点を軽く超える好内容といっていいだろう。
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いよいよ１０月１１日（金）にジュリーの２５周年記念の武道館コンサートが行われる。最近、
大会場でのコンサートをほとんどやっていなかったので、うれしい限りだ。(【ジュリー・マニア】
というタイトルは素直に喜べないが…）。そういえば、私が一番最近ジュリーを武道館で見たのは、
８２年か８３年のクリスマスあたりだったから、もう１０年近く前になる。こうなったら今回は、
とことん派手に、大がかりな(できれば奇をてらった）ステージを見せてほしいもの。そんなことを
考えていたら、久しぶりに８０年の横浜スタジアムでのコンサートを見たくなって、押し入れから
ビデオを引っ張り出した。25.000円という当時の価格にまず、びっくりしたが、それ以上におどろいた
のは、コンサートビデオとしての質の高さ、カメラワーク、映像処理など、まったく古さを
感じさせないし、今でも十分楽しめる。それにレーザー光線などを効果的に使ったスケールの大きな
ステージ演出もなかなかのものなのだ。当然のことながら、その後の♪ミス･キャスト♪
や、昨年のツアーのビデオなどと、まるでレベルが違う。できれば、今回のコンサートも最高の
スタッフを起用して、質の高いビデオ作品にしてもらいたい。
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